愛媛県のパブリックコメント制度に意見を提出しました

公の施設(指定管理者施設)のあり方の見直し(案)
に対する意見の募集について
愛媛サポートクラブではスタジアム問題に関して愛媛県の考え方を問う、
めったにない機会と考えましたので、表記のパブコメに応募しました。
以下、その内容です。 (PDF版はこちらから)
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1.えひめ国体の会場としての施設整備について
 ホームページなどで公開されている『えひめ国体マスタープラン:えひめ国体開会式会場のグランドデザイン』や報道されている内容等で、2017年えひめ国体のために総合運動公園の陸上競技場に開会式、陸上競技、さらにはJリーグ規準に対応するための改修を加えることを拝見しています。
 県内唯一の第一種公認陸上競技場ですが築後30年を経ており、今後20~30年といった期間、施設を維持するための耐震工事などを国の補助金が拠出される国体開催を機に行うことは必須と思われますが、国体のみで必要とされる改修およびJリーグ規準を満たすため、という改修には再考の余地があると考え、以下に意見を述べさせていただく次第です。

(1) 開会式会場について
 まず国体の開会式会場について考察しますと、本年開催される千葉国体では、既存の陸上競技場が築40年と老朽化していることから耐震補強工事などを先立って行っていますが(※1 この工法は日本建築技術協会の賞を獲得しています。別添資料をご参照ください。)、15億円程度の費用 で耐震工事や小規模な屋根の追加などを行っており、そのまま国体に使用される模様です。また3万席のうち2万席が芝生席でもあり、開会式は国体史上初、野球場に(千葉マリンスタジアム)において開催される予定です。
 『えひめ国体開会式会場のグランドデザイン』でも開会式開催場所の候補として坊っちゃんスタジアムが挙げられ検討されたようですが、主に入場行進・整列のスペースが不足することを理由に断念されています。行進に使えるグラウンド面の広さという点で、千葉マリンスタジアムと坊っちゃんスタジアムでは大差なく、千葉マリンで可能であれば坊っちゃんスタジアムで開催できるものと考えます。愛媛で、最も立派で、全国にその存在を発信すべき坊っちゃんスタジアムで開会式を行い、陸上競技場への投資を抑えるという選択肢があるのではと考える次第です。
 千葉マリンは人工芝、坊っちゃんスタジアムは天然芝、という違いはありますが、a-nation開催時には総合運動公園陸上競技場にパレットを敷いて対応し、直後にJリーグの試合の開催実績もあることから、技術的には問題ないものと考えます。
また、坊っちゃんスタジアムの唯一といってもいい弱点である、フルカラービジョンを、国の補助が受けられる国体整備の一環として設置することも考えられると思います。プロ野球などを開催する際に、フルカラービジョンがあることは大きなポイントになるでしょう。
 このグランドデザインの資料では渋滞の発生、駐車場の絶対数不足、が予測され、その解消については「園内への第3の進入路の新設」といった抜本的な改修が必要とされていましたが、その後、計画が縮小の方向と伺っていますので根本的な改善策がないままではと危惧しています。 a-nation開催時に匹敵する3万人が来場することを考えると、鉄道2路線に加え、車でのアクセスも(一部でも)外環上道路完成により大幅に優位に立つ中央公園のほうが問題なく開催できるのではと考えます。
 もうひとつの要件とされている雨天時の代替施設も同施設内の武道館で満たされると考えます。愛媛の木材、加工技術の粋を集めた武道館を全国に発信することも意義深いはずです。おそらく千葉国体の開会式場決定は愛媛県における検討の後であったと思われますが、まだ開催まで月日があり、先行事例を踏まえて再度ご検討いただくことを要望します。

(2) 陸上競技のための改修について
 陸上競技場としてみると、現陸上競技場はすでに一種公認であり、国体だけのためとしたらレーンの増設などが必要かどうかなど、議論の余地があるのではないかと考えます。
 特にレーン数については、2009年に8レーンしかない広島ビッグアーチで陸上日本選手権が開催されていることや、そもそも日本陸連の規定では第1種公認の要件として「大規模改修・改造時には、トラックの面積に許容のあるときは9レーンに改修する。やむをえない場合は8レーンでも可とする」とされていること、前出の千葉では8レーンのまま国体が開催される予定であること、などから現状の8レーンのままで開催可能では、と考えます。
 9レーン化を進める理由の一つとして一番内側のレーンが傷みやすいから、という点が懸念されるようでしたら、トラックの貼り替えを国体の直前に行えば国体の開催には問題ないのではないでしょうか。一種公認は5年毎ということで、すでに30年目の更新のために必要な手配はなされたものと伺っています。
 この他にも、跳躍競技や投てき競技などのために補助競技場も含めて改修が検討されているものと推察しますが、国体後、国体に匹敵する要件が求められる大会の招致の頻度は低いと考えるのが妥当と思われますので、『国体改革』の「施設の弾力運用」の方針に基づき1回の国体のためだけに改修が必要な項目はできるだけ最小限にするべく再度ご検討いただくことを要望するものです。なお、冒頭にも触れましたが、既存の設備の老朽化が進んでいますので、定例の大会開催や、構造物、設備などの維持のために国体を機に補修や交換を行うことは当然必要なことと考えます。

(3) 芝生の貼り替え、スタンド改修工事中のJリーグの開催について
 ちょうど昨年、J2リーグのベガルタ仙台のホームスタジアムであるユアテックスタジアムでは芝生の貼り替えが行われましたが、動員数が大幅に落ちることが分かっていながら、前半戦、不便なことで名高い宮城スタジアムを使用せざるを得ませんでした。シーズンオフの期間だけでの貼り替えでは対応できなかったわけです。北国であること、スタンド部に屋根があるために一部日照が遮られるなど、気候条件が異なるとはいえ、国体への改修のなかに含まれていると思われる「芝生の完全貼り替え」をシーズンオフの3か月間だけで完了するのは難しいと思われ、仮に無理に行ったとしても芝の根付きが悪く、2009年の大分のように試合開催が危ぶまれるような可能性も考えられます。これは代替となる競技場が県外にしかないため特に懸念される問題です。過去には横浜の三ッ沢球技場が芝生の貼り替えを急いだ(5月から8月に実施)ためにその後の状態がすぐれず、貼り替え後のリーグ戦開催に支障をきたした例もあります。
またスタンドの改修はJリーグ開催期間中も含め、部分ごとに閉鎖しながら時間をかけて行うことが予想されますが、水戸や岐阜の例では完全に閉鎖して改修工事が行われていることからも、工事を行いながら、本当に支障なく開催できるものかも不安なところです。
 また、当初案より縮小された規模の改修では、Jリーグの基準を十分に満たせないと思われ、将来さらなる投資が必要になる可能性があるものと考えます。
 これらの点からも、陸上競技場への改修はひとまず施設維持のために必須なものに留めるべきと考えますがいかがでしょうか。

2. Jリーグ愛媛FCの試合会場として - 立地環境・アクセスの問題
 わたくしどもは愛媛FCのサポーターグループであり、県内で唯一Jリーグが開催できる会場として、総合運動公園陸上競技場には大変お世話になっており、大変愛着を感じているるものです。国体へ向けての改修工事は、(Jリーグ昇格時には間に合わなかったものも含め)将来もJリーグの会場として使い続けるために必要な項目が含まれているものと推察します。特に全国のJリーグクラブのホームスタジアムのなかでもバックスタンドについては最も観戦に適さない構造となっていることから、初観戦の人たちに来場を促しても、ゲームの面白さがなかなか伝わらず、リピーターになりにくいなど、その改修は長年待ち望んだものでした。ところが、過去4年の経験をもとに考察をいたしますところ、以下に述べますように、その改修工事の費用対効果は非常に限定的と思わざるをえないものであり、この点からも総合運動公園陸上競技場の改修には再考が必要ではと考える次第です。

(1) スタジアム周辺人口と来場者数の相関
 昇格から4シーズンにわたり、愛媛FCではクラブもサポーターグループもいろいろな取り組みで少しでも多くの方に来場していただくように努めてきましたが、平均来場者数は横ばいのままです。その原因を検証すべく、1試合平均来場者数と周辺人口(5km圏内 )と比較してみたのが以下のグラフです。一部の例外を除き、ほぼ正の相関を示しています。詳細なデータを別添していますのであわせてご覧ください。

2009j2-5kmr.jpg

(※2 圏内人口は2005 年国勢調査の統計データを町域(「□□市○○」)単位で地図上に落とし込み、スタジアムを中心とした円形領域の人数を計測しています。市町村合併や政令指定都市化が国勢調査以降に行われている地域について、集計に大きく影響がある場合は補正を行っていますが、補正が完全ではない場合があります。また同じ地名でも統計データ間で表記が異なる場合、区市町村までしかマッチせず、人口分布の位置が少し異なる位置に落とし込まれる場合もあり得ますのでご留意ください。) 
 2009年新加入クラブのなかでもスタジアムの立地環境が似ているカターレ富山とはほぼ来場者数が同程度となり、5km圏内人口が倍近いファジアーノ岡山にはかなり水を開けられている状況です。もちろんクラブの成績や施策による影響もあると思われますが、いかにスタジアムの立地に左右されるかがご覧いただけると思います。愛媛の場合、Jリーグが行っている来場者調査では遠くからの来場者の比率が高いことが報告されていますが、これは逆に見ればスタジアムの足元には十分な背景人口がいない、ということでもあると考えます。
 愛媛同様、県内全域をホームタウンとするクラブが増えていますが、頻繁に来場していただけるファンを増やすには、観戦のためにチケット料金以外の費用と時間のかからないスタジアム周辺に相当数の人口があることが肝要と考えます。総合運動公園の場合、中心街からの距離でみると他にも遠いスタジアムはありますが、自転車での来場が難しい標高差、アクセス道路が十分でないことから発生する終了後の渋滞などを総合的に考えるとワーストに分類されることは間違いありません。
J2リーグの下位クラブ、および今後J2リーグ昇格を目指している大半のクラブはこのような国体のために建設されたスタジアムをホームスタジアムとしていますが、恒常的に集客をできる立地にないものが大半で、同様に厳しい状況に置かれています。そんななか、長崎や山口では既存の競技場が築40年と老朽化していることから、これまた国体およびJリーグ開催が可能な競技場とすべく約80億~100億の費用で立て替えが行われており、集客での苦労が今から懸念されます。

2009j1-5kmr.jpg

 J1クラブでは収容人員上限のために平均来場者数が頭打ちになってしまうスタジアムがあること(G大阪、柏、千葉など)やクラブによって歴史が大きく異なることもあって、5km圏内人口との相関がJ2ほどはっきり見えませんが現在の立地ですとJ1に昇格できたとしてもワーストであることには変わりなく、一方、中央公園や堀之内といった立地に新スタジアムができればJ1の中にあっても十分に中位に位置できる環境になると思われます。
 昇格争いしたクラブは来場者数が多いことから「クラブが成績を上げるのが先決」という見方もあると思いますが、逆に、「入場料収入が安定しているからこそスポンサー収入も安定し、チーム力も向上する」という見方もあるべきと考えます。

(2) 新規開場したスタジアムにおける来場者数の変化
 もう一つ、スタジアム環境と来場者数の関係を示す資料を挙げます。以下のグラフは過去に新規スタジアムが開場した前後の来場者数の推移を示したグラフです。集客におけるJリーグ最大の成功事例である浦和レッドダイヤモンズやアルビレックス新潟には埼玉スタジアムやビッグスワンの存在が大きく寄与したことがうかがえます。
 また、ジェフユナイテッド千葉のホームスタジアムではフクダ電子アリーナはJR蘇我駅から徒歩10分ちょっとの好立地でもあることから、集客で大きな成果を挙げているだけでなく、開設と同時にネーミングライツが適用されたこともあり、新興のAEDのメーカーであるフクダ電子の社名が全国に幅広く浸透するのに大きな役割を果たしたと思われます。

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(3) 同一クラブで複数のスタジアムを使用している例
 さらにもう一つ、立地の優劣としてご覧いただきたい事例は二つのスタジアムを併用しているクラブ、コンサドーレ札幌とベガルタ仙台です。ベガルタ仙台は2009年、ホームスタジアム、ユアテックスタジアムの改修(芝生の貼り替え)により前半戦を宮城スタジアムで開催しました。

 札幌の例:
  5km圏内人口=
   札幌ドーム約47万人/厚別約35万人
  2009年の来場者数=
   札幌ドーム14,816人(11試合)/厚別7,017人(13試合)
 仙台の例:
  5km圏内人口=
   ユアスタ約34万人以上/宮スタ約10万人
  2009年の来場者数=
   ユアスタ14,164人(11試合)/宮スタ11,792人(14試合)

 札幌ドームは屋根付きのワールドカップスタジアムということもあり周辺人口差以上の差が来場者数にあらわれているようです。ベガルタ仙台はユアテックスタジアムでクラブに根付いたサポーターが不便を我慢して宮城スタジアムまで出向くことも多いようですが、繰り返しスタジアムの不要論が出るほどアクセスは劣悪で、いかに施設がワールドカップ仕様で優れていても、立地が悪ければ活用されない典型的な例です。同一クラブ、同一年度の実績によりスタジアム環境が来場者数に直結していることがおわかりいただけると思います。

3. 国体へむけての改修計画をご再考いただきたい理由

(1) 愛媛FCの現状と今後
 町田や長崎のように現状J2基準を満たすスタジアムがなく苦労している地域があることを思えば、ネーミングライツまで適用され、現行のJ2規準を最低限満たしているスタジアムがあることは非常にありがたいことですが、現在の立地・アクセスでは来場者数の大幅増は難しいと考えざるを得ず、クラブの発展は難しいと思われます。2010年に昇格したギラヴァンツ北九州も総合運動公園の倍近い周辺人口があり、来場者数では簡単に抜かれてしまう可能性があります。(さらに北九州市はすでに専用競技場を新設する方針を発表しています。)
 クラブの経営規模が伸び悩むと、早晩始まる下位リーグ、JFLとの入れ替え制度により、降格の危機にさらされる可能性があります。一度分配金やスポンサーを失うと次にJリーグに這い上がることが非常に難しくなることが予想されます。また降格せずとも、クラブ数増加などによる分配金の低減も予想されます。昨今の経済情勢もあり、スポンサー企業の新規獲得や広告料の増額が難しいなか、来場者数を大きく増やし、経営の基盤となり得る水準の入場料収入を安定してあげることが、愛媛唯一の全国区プロスポーツクラブを維持する上で必須と考えます。

(2) 愛媛FCの存在意義・価値
 愛媛FCが存在する意義の詳細については本題から離れるため本意見書からは割愛しますが、愛媛FCの経済効果は2006年に年間12億円余りという試算がなされ、さらに愛媛とミカンを全国に発信している効果は計り知れないものがあるはずです。例を挙げますと2007年の天皇杯では準々決勝に進出しましたが、試合直後のNHK総合全国放送午後7時からのニュースではスポーツに切り替わった冒頭にミカンを全面的にモチーフとした愛媛FCのマスコット(オ~レくん、たま媛ちゃん)が大写しになったこともあります。直近では高速道路料金1,000円の恩恵もあり、岡山から千人近いサポーターが来場しましたが、相当な人数が前泊し観光していただいた模様です。少しさかのぼれば札幌から500人近いサポーターが来松し、試合の終わった夜、数多くの方々が道後を散策していたこともあります。陸上競技場に適用されているネーミングライツは同様な他県の施設の例と比較してもそん色ない金額であり、これも愛媛FCによる全国への情報発信があってこそ実現しているものです。

(3) 国体へ向けての改修への疑問と再考余地
 しかるに上述の通り、現在の立地・アクセス環境では来場者数の大幅な増加は見込めないと想定せざるを得ないため、本来、待望されていた陸上競技場の改修を行っていただくべきものかどうか大きな疑問を抱くにいたりました。他県の例では国体開催の3~4年前に改修、建築工事が行われることが多いことから、今少し再考のお時間をとっていただくことはできないものかと考える次第です。(代替競技場がないため、実際に使用しながら部分工事を繰り返す必要があることは理解していますが、あと1年~2年はお待ちいただけるのでは、と素人ながら考えるところです。)

(4) 新球技場について
 一方で、わたくしどもの夢である、立地・アクセスに優れた場所に新球技場を開設することには、まだ各自治体や県民の皆様の多くのご支持が得られる状況でないことは理解しています。わたくどもは、愛媛FCの存在意義・価値を草の根から訴え、愛媛FCのサポートの輪を大きく広げていくことで、一人でも多くの方のご賛同を得られるように努力しなければなりません。また、ご再考いただいている間に愛媛FC自身にも最大限頑張っていただき、J1が伺えるような中位から上位にあがっていただくことで、県民の方々に22万人の署名をいただきJリーグ昇格を決めた2005年のようなご理解をいただけることを願っています。
 新球技場の候補地や開設に向けてのさまざまなアイデアについても考えているところが数多くありますが、ひとまずは国体へ向けての改修をご再考いただき、できれば費用を削減していただく間に、県民のみなさんのご理解を得るための活動のなかでご提案していくべきものと考えています。

以上

愛媛サポートクラブ
(愛媛県プロスポーツ地域振興協議会会員)
代表 和泉逸平